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「京都市いきいき市民活動センター」の在り方に
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~京都市市民活動センター評価委員会から答申~
より先進的で「持続可能」なセンターの提案に評価と期待!!
京都市では、市民活動の総合的な支援などを行うために設置している「京都市市民活動総合センター」(ひと・まち交流館)を補完し、市民がいきいきと活動できる場所と機会を提供するため、市内13箇所に「いきいき市民活動センター」を設置しています。
いきいき市民活動センターは、旧同和地区に設置されていた隣保館、コミュニティセンターを、市民の貴重な共有財産として有効活用するため転用した施設です。
隣保館は、同和問題の解決に向けて、主として旧同和地区住民の生活改善や生活支援を目的に、昭和11年に設置されました。
そして、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」の失効に伴い、平成14年4月からは、コミュニティセンターとして、「人権文化が息づくまちづくりを進めるための市民の交流と地域コミュニティ活動の拠点」に位置付けられ、生活相談をはじめとする隣保事業に加え、利用対象を区・支所域、市全域へ拡大し、その後、地域に根ざしたNPO法人等の運営組織に一部業務を委託するなどして、市民の交流とコミュニティ活動の振興を図る施設として役割を果たしてきました。
その後、「京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会」の最終報告書で見直しの提言がされたことを受け、平成22年度末をもってコミュニティセンターが廃止され、平成23年度からは、既存施設の有効活用を図るため、「いきいき市民活動センター」として設置されたものです。
転用から8年を経た昨年3月、立地条件等により利用件数など施設の利用状況に差が生じていることなどから、いきいき市民活動センターが真に市民生活、市民活動を総合的に支援する施設へと進化していくため、その全体の在り方について市民活動センター評価委員会に諮問されていましたが、今般、同委員会から答申が提出されましたので、ご紹介致します。
【答申内容】
1 はじめに
京都市市民活動センター評価委員会は,京都市が市内13箇所に設置しているいきいき市民活動センター(以下「いきいきセンター」という。)について,その全体の在り方に関して考え方を示すよう,平成31年3月22日付けで諮問を受けた。
いきいきセンターは,隣保館,コミュニティセンターであった施設を市民の貴重な共有財産として有効活用を図るために転用した施設であり,設置後9年目を迎えている。
施設設置当初から,「真に市民生活,市民活動を総合的に支援する施設へと進化していく」ものとされており,指定管理の2期8年の運用を終えた時点で上記の諮問がなされ,検討結果を早期に反映できるよう,3期目の指定管理期間は,通常の4年から3年(令和元年度~3年度)に短縮されている。
当委員会は,これまで平成22年度,26年度及び30年度の3回にわたり,いきいきセンターの指定管理者を選考するとともに,毎年度,各いきいきセンターにおいて,指定管理者の得意分野や専門分野の強みを活かして,地域や利用者とともに実施している市民活動活性化事業の実施状況を聴取し,意見を述べてきた。
この間,施設全体としては,貸館の利用件数が年々増加しており,市民活動の場として定着してきている。また,市民活動支援事業に関しても,前述の市民活動活性化事業を含め,いきいきセンターによっては,指定管理者と利用団体との連携・協働による新たな事業が展開される好循環も生まれており,施設の設置目的である「市民がいきいきと活動できる場所と機会を提供する」取組が進められている。
当委員会としては,今回の諮問に基づく検討を進めるに当たり,いきいきセンターの運営状況調査,利用者アンケート,指定管理者ヒアリングに加え,改めて全いきいきセンターを訪問するなど,実態把握に努めたうえで,議論を重ねた。
この答申では,いきいきセンターが実施している貸館事業や市民活動支援事業等,各業務の方向性について考えを述べるとともに,施設の更なる活用等,新たな提案も行っているので,京都市におかれては,市民活動の更なる発展に向けて,必要な見直しに取り組んでいただきたい。
この答申をまとめるに当たり,貴重なご意見を頂戴した,いきいきセンターの利用団体や指定管理者等,ご協力頂いた皆様に厚く御礼を申し上げる。
2 経過及び概要
いきいきセンターは,旧同和地区に設置されていた隣保館,コミュティセンターを転用した施設である。
隣保館は,同和問題の解決に向けて,主として旧同和地区住民の生活改善や生活支援を目的に,昭和11年に設置され,「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」の失効に伴い,平成14年4月からは,コミュニティセンターとして,生活相談をはじめとする隣保館事業に加え,市民の交流とコミュニティ活動の振興を図る施設として役割を果たしてきた。
その後,「京都市同和行政終結後の在り方総点検委員会」における議論を踏まえ,コミュニティセンターについては,平成22年度末をもって廃止することとされた。
平成23年度からは,既存施設の有効活用を図り,市民がいきいきと活動できる場所と機会を提供するため,市内13箇所にいきいきセンターが設置されたが,設置当初から,施設の性格や役割として,それぞれが独立した公の施設として,指定管理者を中心に,地域や利用者との「交流」,「協働」を通じ,それぞれが特色ある施設への「進化」を目指すこととされている。
いきいきセンターでは,市民活動を幅広く支援するため,貸館事業,市民活動支援事業,市民活動活性化事業を実施するとともに,高齢者ふれあいサロンを運営している。
また,前述のような経過の下,貸館事業として供用している諸室として,会議室,和室,集会室のほか,多目的ホール,音楽室,料理室を設置しているセンターがある。
3 現状及び課題
(1)貸館事業
ア 現状
いきいきセンターの利用件数は,年々増加しており(23年度:15,397件→30年度:44,267件),稼働率も上昇している(23年度:15.2%→30年度:39.2%)。
運用から8年が経過し,市民活動や地域活動に取り組む団体のほか,文化・体育サークルなど,様々な団体の活動拠点として定着している。
利用実態アンケートの結果を見ると,いきいきセンターを知ったきっかけとしては,家族・知人からの紹介が最も多いが,各いきいきセンターのホームページやイベントチラシが情報源となっているとの回答も多く,指定管理者による積極的な広報活動が,施設認知度の向上・利用件数の増加につながっていると考えられる。
イ 課題
このように,いきいきセンター全体としての利用件数は伸びているものの,個々の施設の状況を見ると,8年間で10倍以上増加し,稼働率が80%を超えた施設がある一方で,利用件数は少しずつ伸びてはいるものの,稼働率が低い施設も少なくない(30年度:最高80.1%,最低5.6%)。
このように,利用状況に大きな差がある中で,いきいきセンターのいわゆる本館施設には,貸館事業や,それに関連する公金収納事務,市民活動支援事業等のために,職員2名を配置することとされているが,施設の利用状況や業務内容に応じた柔軟な職員配置について検討していく必要がある。
また,各施設の収支を見ると,赤字の施設がある一方で,大きな黒字となっている施設もあり,支出内容を分析したうえで,現在の算定方法について確認する必要がある(30年度:赤字最大△16万7千円,黒字最大579万7千円)。
(2)市民活動支援事業・市民活動活性化事業
ア 現状
いきいきセンターにおいては,この間,市民団体や地域団体の活動を支援するため,様々な取組が実施されている。
市民活動支援事業として,市民団体等からの事業の立上げ・充実や,各種助成金の活用等に関して寄せられる相談への対応をはじめ,団体間の交流促進,参考情報の発信などの取組が進められている。
また,市民活動活性化事業として,NPO法人や大学との協働による地域の子ども・高齢者を対象とした事業や,地域の魅力を探り,発信する取組のほか,演劇・音楽を通じた市民活動の支援など,指定管理者の得意分野・専門分野を活かした取組も展開されている。
これらの取組により,いきいきセンターの支援を受けた団体が支援側にまわるといった好循環が生まれるなど,各いきいきセンターにおいて,「市民がいきいきと活動できる場所と機会を提供する」という,施設の役割を果たすための努力が続けられてきている。
イ 課題
一方,各いきいきセンターにおける取組を見ると,施設によって事業の内容や頻度に相当の違いがある。
市民活動支援事業に関しては,事業に対する地域や利用団体のニーズに差があるといったことが影響していると考えられ,施設によっては,認知度,利用頻度共に低調な状況が続いている。
また,市民活動活性化事業については,地域のニーズを的確に捉え,地域団体や住民との協働の取組により,多くの方が参加いただくイベントが開催されるなど,成果を挙げているが,いきいきセンターがない地域では,一般的に地域団体の自主的な財源により取り組まれている事業も含まれている。
(3)高齢者ふれあいサロン
ア 現状
高齢者ふれあいサロンは,高齢者の憩いの場として活用することを目的に,北及び岡崎を除く,11箇所のいきいきセンターに設置されている。
高齢者を対象とした様々なイベント等により,遠方からも利用者が訪れるなど,この間,利用者数が大きく伸びている施設(23年度:1,353人→30年度:6,376人)があるが,全体としては,いきいきセンター周辺の市営住宅入居者が減少していることが影響し,年々,利用者数が減ってきている(<全体>23年度:22,817人→30年度:20,908人,<30年度1施設当たり平均>6.3人/日(最高:25人/日,最低0.5人/日))。
イ 課題
このような中,利用件数が極めて少ない施設においても,本館から離れている場合には,高齢者ふれあいサロンの運営のために職員1名を配置することとしており,利用者数の増加や効率的な運営に向けた見直しを考えていく必要がある。
4 今後の方向性
(1)貸館事業
前述のとおり,貸館事業については,利用が増加しており,市民団体や地域団体の活動拠点として定着していることを踏まえると,基本的には,ニーズに応じた形で,継続を検討していただきたい。
各施設においては,これまでから利用件数の増加に向けた努力がなされているが,施設の有効活用の観点から,指定管理者の創意工夫をより一層引き出す(インセンティブが働く)仕組を導入することにより,稼働率の向上や運営の効率化につなげていくことが重要である。
具体的には,利用料金制の導入や,使用料を指定管理者が直接収入することを前提に,効率的に運営している指定管理者を基準とした委託料の算定,柔軟な職員配置について検討していく必要があると考える。
また,検討に当たっては,立地条件に差があることに配慮していただきたい。
なお,利用が見込めない施設については,市民や地域が主体となる活動拠点に転用するなど,改めて資産の有効活用という観点から,再活用を検討していただきたい。
(2)市民活動支援事業・市民活動活性化事業
前述のとおり,市民活動支援事業及び市民活動活性化事業(以下「市民活動支援事業等」という。)の内容等に差があることについては,指定管理者の個性による部分もあるが,地域のニーズに違いがあることも影響していると考えられることから,全いきいきセンター必須の基本業務と位置付けている現在の仕様を見直し,重点化を図る必要がある。
具体的には,貸館事業をいきいきセンターの基礎業務としたうえで,市民活動支援事業等については,追加業務に位置付けを変更し,地域や利用団体等のニーズを踏まえた優れた提案があった施設において実施するといった仕組を導入していただきたい。
また,事業の成果・実績を評価することで,事業内容がより良いものへと発展・充実していく循環の構築を目指していただきたい。
なお,市民活動活性化事業のうち,一般的に地域の自主財源により取り組まれている事業については,例えば,継続して実施する期間に上限を定めるなど,地域の自立的取組への移行を促すための運用について検討していただきたい。
(3)高齢者ふれあいサロン
利用者が極めて少ないところがある一方で,高齢者を地域活動の担い手と捉え,様々なイベント等の開催により,利用者が増加しているところもあり,利用者の増加に向けた指定管理者の創意工夫をより一層引き出す仕組を導入する必要がある。
具体的には,高齢者ふれあいサロンの運営についても,追加業務に位置付けを変更したうえで,多世代が利用し,交流できる事業を実施するなど,利用者の増加に向けた優れた提案があった施設において実施するといった仕組を導入していただきたい。
なお,利用の増加が見込めない施設については,いきいきセンターの付帯施設として継続するのではなく,市民や地域が主体となる活動拠点に転用するなど,改めて資産の有効活用という観点から,再活用を検討していただきたい。
(4)施設の更なる進化について(提案)
前述のとおり,いきいきセンターは,地域団体や市民団体の活動拠点として活用され,指定管理者と利用団体との連携・協働による新たな事業も展開される好循環が生まれている。
一方で,指定管理者からは,市民活動支援事業等に関して,参加者から実費負担を超えて参加費を徴収できない現行の枠組みや,貸館事業に係る使用料の見直しを求める声がある。
また,市民活動や地域活動の支援として,行政の施設をNPO法人や企業のCSRの拠点として活用している例があることを踏まえると,市民活動や地域活動の支援に意欲的な団体(市民団体,地域団体,NPO法人,企業等)の自由な発想に基づく柔軟な運営に委ねるという選択肢も検討すべき時期に来ている。
もとより,市民活動に取り組む団体や企業の中には,活動拠点を探しているケースもあると想定され,貸館事業と共存する形を含め,広く提案を募集することで,市民活動の幅の拡大につなげていくこともできると考えられる。
現在のいきいきセンターを公の施設として指定管理者制度により運営する枠組においても,成果を挙げていると考えるが,厳しい財政状況の下,市民活動支援の取組を持続可能なものにしていくため,現在未利用となっている施設部分の活用を含め,上記に述べた提案募集について検討していただきたい。
5 その他(付言)
いきいきセンターは,建築後50年を経過する建物もあり,全体として老朽化が進んでいる。
これまで,京都市や指定管理者により,必要に応じて補修が実施されてきたが,施設を継続的に運営していくためには,多額の経費が必要になる事態も想定される。
元々,資産の有効活用として転用したもので,設置当初から,それぞれが特色ある施設への「進化」を目指すとされていたことや,いきいきセンターの利用料が京都市の他の貸館施設に比べて低く設定されていることを考え合わせると,利用可能な期間における暫定利用であるとも解されるので,いきいきセンターの在り方を示す機会を捉え,現在の活用を将来にわたって継続していくのかどうかを明らかにしたうえで,いきいきセンターとしての供用期間や,多額の補修費が必要となる不具合が発生した場合の対応について,あらかじめ明確にしておくことが必要であると考える。
6 結びに
当委員会では,これまでにも指定管理者の選考,市民活動活性化事業の報告聴取の機会ごとに意見を述べてきた。
各指定管理者において,真摯にご対応いただいており,それぞれ事業や取組の内容が改善していることを実感しているが,同時に,設置後8年間にわたり活動状況を見てきた中で,いきいきセンターの見直しを検討すべき時期に来ていると考えていたところでもあった。
そのような思いから,今回の答申において,提案や付言という形で意見を述べたものである。
施設の更なる進化に向けた提案については,これまでの枠組を変更するものであり,前提条件に相当の幅があることから,実現には多くの課題があると考えるが,京都市における市民活動支援の取組が,より先進的で,持続可能なものとなることを願い,触れたものであるので,積極的なご検討をお願いしたい。
また,付言に関しては,いきいきセンターを巡るこの間の状況や,設置の経過から,配置に偏りがあることなどを踏まえたものであるので,施設の方向性を定めるに当たって参考にしていただきたい。
(参考)
1 京都市市民活動センター評価委員会委員名簿
2 京都市市民活動センター評価委員会への諮問内容
(1)これまでの指定管理における各いきセンの運営状況の評価
(2)上記及び地域のニーズや立地条件等を踏まえたいきいき市民活動センターの
在り方
(3)指定管理業務の仕様の見直し
3 京都市市民活動センター評価委員会における検討の経過
平成31年 3月22日(金) 諮問
令和 元年 9月11日(水) 審議
同年10月30日(水) 審議
同年12月11日(水) 審議
令和 2年 2月20日(木) 審議
同年 3月 2日(月) 答申