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「自由同和会・6条実体調査の結果について」

令和2年7月3日

6条調査の結果について 自由同和会中央本部

 今回の調査は、①法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査②地方公共団体(教育委員会を含む)が把握する差別事例の調査③インターネット上の部落差別の実態に係る調査④一般国民に対する意識調査、の4 点について調査された。
 ①の法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査については、平成27 年~平成29 年までの人権相談、平成25 年~平成29 年までの人権侵犯事件についての調査で、人権相談の件数は平成27 年404 件、平成28 年424 件、平成29 年402 件、人権侵犯事件の件数は平成25 年80 件、平成26 年110 件、平成27 年117 件、平成28 年76 件、平成29 年103 件になっていることから、おおむね横ばいとしながらも、人権相談全体の0.2%弱、人権侵犯事件全体の0.5%前後と、全体から見ればごく僅かであることを示しており、平成16 年の人権侵犯事件の件数が215 件であったことからすれば約半数に減っている。
 結婚・交際に関する差別での人権相談は平成27 年39 件、平成28 年43 件、平成29 年53 件と増加しているにも係わらず、結婚・交際に関する差別での人権侵犯事件は平成25 年10 件、平成26 年17 件、平成27 年11 件、平成28 年11 件、平成29 年9 件と横ばいであることは不思議である。
 最近ではインターネット上の事件が増加傾向にあり、平成25 年では80 件の内8 件(10.0%)、平成26 年では110 件の内21 件(19.1%)、平成27 年では117件の内48 件(41.0%)、平成28 年では76 件の内28 件(36.8%)、平成29 年では103 件の内55 件(53.4%)になっている。その大半が識別情報の摘示(旧同和地区の表示)であるとしており、平成29 年ではプロバイダー等に削除要請した件数が27 件で、20 件が削除に応じたとしている。
 ②の地方公共団体等が把握する差別事例の調査については、全国全ての地方公共団体(1,788 団体)に調査票を送付し、全地方公共団体から回答があり、法務局の管轄地域として全国を、札幌ブロック(北海道)、仙台ブロック(宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県)、東京ブロック(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、山梨県、長野県、新潟県)、名古屋ブロック(愛知県、三重県、岐阜県、福井県、石川県、富山県)、大阪ブロック(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県)、広島ブロック(広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県)、高松ブロック(香川県、徳島県、高知県、愛媛県)、福岡ブロック(福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県)の8ブロックに分けて把握している。
 その調査の内容は、相談体制、受理した相談の内容、相談への対応等、また、インターネット上のものとそれ以外のものに分けて回答を求めている。
 相談体制として人権問題に関する専門の相談窓口については約半数(52.9%)の地方公共団体が設置しており、部落差別に関する相談件数として、平成25 年では2,039 件、平成26 年では2,076 件、平成27 年では2,242 件、平成28 年では2,367 件、平成29 年では2,217 件になっており、その内、結婚・交際に関する相談件数は、平成25 年では82 件(4.0%)、平成26 年では56 件(2.7%)、平成27 年では103 件(4.6%)、平成28 年では69 件(2.9%)、平成29 年では40 件2(1.8%)になっている。
 類型別では、その他が7 割弱を占めていて、次に多いのが差別表現で、平成25 年では440 件(21.6%)内154 件がネット、平成26 年では448 件(21.6%)内163件がネット、平成27 年では468 件(20.9%)内124 件がネット、平成28 年では595 件(25.1%)内236 件がネット、平成29 年では582 件(26.3%)内255 件がネットであった。
 教育委員会が把握する部落差別に関する事案の総数は、平成25 年は144 件、平成26 年は133 件、平成27 年は158 件、平成28 年は193 件、平成29 年は259 件で東京ブロックが162 件(62.5%)と大幅に増加している。
 ③のインターネット上の部落差別の実態に係る調査に関しては、インターネット上に無数に存在するウェブページの中から、部落差別に関連するものを抽出するため、「部落」又は「同和」を基本的なキーワードとして、25 の関連キーワードを組み合わせて、令和元年6 月1 日から6 月28 日までの間に検索を実施し、782 の部落差別関連ウェブページが抽出された。この782 ウェブページの内訳は、掲示板が20、ブログが88、Q&A サイトが133、SNS が5、Wikiサイトが89、まとめサイトが53、検索サイトが0、その他が394 ページになっている。
 内容類型別では、111 ページが識別情報の摘示で、全国の「部落」の一覧であるとして具体的な地名を掲載しているものが30 ページ、「部落」を訪問したとして具体的な地名を挙げて風景写真等を掲載しているものが16 ページ、著名Q&A サイト(特定の地域が「同和地区」であるか否かについての質問と回答等)が8 ページ、この3つのサイトで5 割近くを占め、特定個人に対する誹謗中傷は29 ページと少数になっている。
 平成30 年6 月1 日から令和元年5 月31 日までの1 年間に部落差別関連ウェブページを観覧していたことが確認された24,366 人のうちから、調査会社のアンケートモニターである10,117 人に対して令和元年7 月18 日から同月20 日までの間、調査票を配信してアンケート調査が実施されたが、回答者が875 人(8%)と少ないことで参考にならないと判断し、省略する。
 なお、133 の地方公共団体がモニタリングを実施していて、36 の地方公共団体が実施予定又は検討中としている。 ④の一般国民に対する意識調査に関しては、全国満18 歳以上の日本国籍を有する者10,000 人を対象に、400 地点の住民基本台帳(376 市区町村)から抽出し、調査票を訪問留置して、訪問回収法(一部は郵送回収法、また、オンラインの回答方式を併用)によって、有効回収者は6,216 人(62.2%)になっている。
 人権問題の相談窓口として、どのようなものを知っているかでは、複数回答において、「市(区)町村の相談窓口」が最も多い42.7%で、「民間の運動団体」は4.6%になっている。
 人権課題に対する関心では、複数回答で「部落差別(同和問題)」は21.3%で、地域別では、近畿30.0%、中国28.1%、四国34.8%、九州24.4%、ほかの地域は20%を切っていて、西日本が関心が高くなっている。
 部落差別解消法の認知度では、「知っている」8.7%、「法律の名前は聞いたことがあるが、内容までは知らない」22.8%、「知らない」67.6%になっていて、50 代以上が高くなっている。
 部落差別が不当な差別であるのを知っているかでは、「知っている」が85.8%で、「不当な差別ではない」が2.2% になっている。
 部落差別(同和問題)の認知度では、「聞いたことがある」は77.7%で、地域別では近畿93.6%、中国91.2%、四国96.0%、九州84.8%、になっていて、一方、「いずれも聞いたことがない」は、北海道42.1%、東北45.9%になっている。
 年齢別では、50 歳代から70 歳代では80%を超えている。 部落差別(同和問題)を知ったきっかけについては、複数回答において、一番多いのが、「学校の授業で教わった」44.4%、次に多いのが、「家族(祖父母、父母、兄弟等)から聞いた」34.9%になっていて、次に「テレビ・ラジオ・新聞・本等で知った」28.0%と続いている。
 年代別では、10 歳代から20 歳代は「学校の授業」が70%を超え、50 歳代でも50%を超えている。一方、50 歳代から80 歳代では、「家族から」が40%弱になっている。
 部落差別に関する経験では、過去に実社会やインターネット上で、部落差別による被害を受けたり、反対に、部落差別に当たる言動をしたことがあるか。
 あるいは、親族、知人が、過去に、同様の被害を受けたり、反対に、部落差別に当たる言動をしたりしているのを見聞きしたことがあるからについては、「ある」が17.5%で、「ない」が81.5%になっていて、「ある」の年代別では、18 歳~29 歳は10.7%、30 歳代は14.6%、40 歳代は14.5%、50 歳代は20.3%、60歳代は20.2%、70 歳代は18.6%、80 歳代は20.3%になっている。地域別では、近畿、中国、四国が25%超と高くなっている。
 「ある」と答えた728 人の部落差別の内容については、「結婚や交際」が一番多く58.0%になっている。年齢別では、60 歳代が71.7%、70 歳代が64.1%、80 歳以上が62.5%と高くなっている。
 部落差別の問題に関して、インターネット上で人権侵害事例を見たことがあるかについては、「見たことがある」が10.8%、「見たことがない」が64.2%、「インターネットを利用したことがない」が23.1%になっている。
 「見たことがある」に回答した449 人が見た内容についての複数回答では、「個人を名指ししない集団に対する悪口」が45.2%、「旧同和地区名の公表」が41.4%、「個人を名指しした悪口」が27.4%、「差別の呼びかけ」が19.6%になっている。
 部落差別に関する意識で、現在でも部落差別があると思うかでは、「いまだにある」が73.4%、「もはや存在しない」が24.2%になっていて、年齢別では、「いまだにある」での18 歳~29 歳は83.2%で、年齢が高くなるほど減少し、80 歳以上では50.8%になっている。一方、「もはや存在しない」では、80 歳以上で44.7%、18 歳~29 歳では15.9%になっている。地域別では大きな差は見られないが、年齢別の差は意味深長である。
 部落差別の原因では、複数回答であるが「昔からある偏見や差別意識を、そのまま受け入れてしまう人が多いから」が75.0%、「部落差別に関する正しい知識を持っていない人がいるから」が59.0%、「地域社会や家庭において偏見が植え付けられることがあるから」が46.4%になっている。 旧同和地区出身者に関する意識では、近所の人が、旧同和地区の出身者であるか否か気になるかでは、「気になる」が4.5%、「気にならない」が79.8%になっている。
 交際相手や結婚相手が、旧同和地区の出身者であるか否か気になるかでは、「気になる」が15.8%、「気にならない」が57.7%、「わからない」が25.4%になっている。年齢別では、年齢が上がるにつれて「気になる」が増え、18 歳~29 歳は8.3%、80 歳以上は23.9%になっている。
 地域別では、近畿、中国、四国が20%を超えている。
 部落差別に関する啓発の経験等については、これまでに、部落差別の問題についての講演会や研修会に参加したり、新聞・雑誌・インターネット等の部落差別解消のための啓発に関連する記事を読んだりしたことがあるかでは、後援会や研修会、人権フィスティバルのイベントは、「3 回以上参加した」8.8%、「1~2 回参加した」10.5%、「参加したことはない」79.5%になっている。
 市町村等の広報紙、パンフレット、掲示物(ポスター、看板等)は、「3 種類以上読んだり、見たりした」8.9%、「1~2 種類読んだり、見たりした」27.4%、「読んだり、見たりしたことはない」62.0%になっている。
 新聞、書籍、雑誌は、「3 種類以上読んだり、見たりした」9.4%、「1~2 種類読んだり、見たりした」30.6%、「読んだり、見たりしたことはない」58.6%になっている。
 インターネットは、「3 回以上見た」5.0%、「1~2 回見た」9.2%、「見たことはない」84.0%になっている。
 テレビ、ラジオ、映画、ビデオは、「3 種類以上、見たり聞いたりした」10.1%、「1~2 種類見たり聞いたりした」35.7%、「見たり聞いたりしたことはない」52.8%になっていて、年齢別では、インターネットだけは若年層が多く、高齢になるほど減少しているが、その他はいずれも、年齢が高くなるほど参加や見たり聞いたりしている人が増えている。
 部落差別に関する問題を解消するために効果的と思われることは何ですかについては、「教育・啓発、相談体制の充実などの施策を推進する」49.1%、マスメディア(テレビや新聞など)がもっと問題を取り上げる」31.0%、職場や地域社会でみんなが話し合えるような環境を作っていく」25.3%、「自然になくなるのを待つ」19.7%、「被害者の救済を図る」15.2%、一方、「どのようにしても差別はなくならない」13.9%、「効果的なものはない」8.8%、「部落差別に関する差別意識を解消する必要はない」1.4%になっている。
 部落差別に関する問題を解消のために、学校教育や啓発(後援会、研修会、広報等)を今後どのようにすればよいと思いますかについては、「やるべきであるが、方法や内容を変えるべきである」37.6%、「積極的に行うべきである」18.4%、「あまりやらない方がよい」10.0%、「今のままで十分である」8.4%、「やるべきでない」3.4%、「部落差別に関する問題を解消する必要はない」0.7%の順になっている。
 年齢別では、「積極的に行うべき」と「やるべきであるが、方法や内容を変えるべきである」を合計した教育・啓発を推進するは、18 歳~29 歳が70.6%で、年齢が高くなるほど減少し、80 歳以上では30.0%になっていて、地域別の教育・啓発を推進するは、北海道、東北、関東では60%を超えているが、近畿、中国、四国では50%を下回っている。
[総評]
 総じて、私どもが想定していた現状認識と一致し、部落差別は完全に解決の方途にあることが証明されたと思われる。
 東日本と西日本、若年層と高齢層の意識や行動の違いが鮮明に表れていて、非常に興味深い調査結果になっているが、一般国民に対する意識調査での、「交際・結婚」において、「気になる」との回答に近畿、中国、四国の地域が20%を超えていることから、近畿、中国、四国地域それぞれの年齢別が知りたいところである。